「電波とどいた?」
2008/09版 その3

2008/09/29 (月)

「同人ゲームの潮流」雑感 (同人)

_ 同人ゲームの潮流(1)「同人ゲームの過去、現在、未来」、 コミケもしばらくお休みしてて、同人的にはもはや過去の人な私ですが、dee さんが覗きに行くとかいってたんで、 知人の本職ゲームPGな人たちにも声かけて、ちょっと冷やかしに行って参りました。あと、某氏に声かけたら そこから話がまわったらしく、各地サークルの中の人がたくさんいて吹いた(苦笑)

_ 1つ目の講演は掘るのが広すぎて浅くなってしまってて、 2つ目(講演資料)は、 話はいろいろ面白かったけど「同人」からははずれてるなという印象。 一番興味深かったのは、講演の後にあった、IGFの人の、海外でのインディーズ な市場がいかにして形成されるに至ったか、という話だったりとか^^; 懇親会は名刺交換&濃い雑談もーどに突入。終わったあとも15人くらいで居酒屋でだべり継続してたりとか。

_ 細かい話とかは へっぽこさんのところ 経由でどうぞ〜。 あとこれ書いてるうちに4gamerに詳しい記事 があがってますね。

_ ルーさんのところ(D.N.A.Softwares) が、これの環境がどーのこーのの話をうけて、 前々から予定はしてたそうなのですが、 シューティング用のシステムを公開されてます

_ あれかなー。タイトルで「同人ゲーム」とふられていたわけですが、 そもそも「同人ゲーム」は「同人ソフト」、さらには「同人」という 枠組みの中にあるもので、他のコンテンツと不可分なものなのですが、 そこの位置づけをうまくとらえきれてないせいで話がまとまって ないのかなと思いました。

_ ずばり、「同人」では「一次創作」はなかなか商売として成立しません。 同人ゲームつくってて、「二次創作」にシフトしてから売り上げの 桁があがって愕然とした経験のある人は俺だけじゃないはずだ(爆)。 講演でも、企業から問題視されたケースがあげられてましたが、たぶんそここそが肝です。 同人の同人、が、ノベルゲームの文脈で語られてましたが、その場合に この視点は無視できないはずです。「月姫」も「ひぐらし」も「東方」も、 「『安全』な二次創作のための一次創作としての『御輿』」という力を 持ちえたからこそ、一次創作にもかかわらずここまで売れたという面はあると思います。 支配的なのは「ゲーム」の部分ではなく、それに組み込まれた物語的コンテンツ。

_ インディーズゲーム:メジャーを目指して商業的な目的でつくられるゲーム、 同人ゲーム:おもしろさを追求、といったとらえかたが示されてましたが、 後者をそう位置づけてしまうとインディーズと対立するように見えて おかしいことになってしまいます。それは「同人」という言葉の 幻想にひっぱられすぎ。

_ 結局のところ「同人ゲーム」は、現状だと、単純に、 「同人誌即売会を主要な流通経路とするコンテンツ主導型のゲーム」 ととらえるのが一番無難だと思います。インディーズ←→趣味・名誉、 という行動原理的な軸はそれとは直行した概念。 「月姫」は「同人ゲーム」にして「インディーズ」なわけです。

_ 歴史的にはむしろこんなかんじに整理して配置したほうが流れがすっきりすると思います。

  1. アマチュアゲーム制作の世界の誕生
  2. インディーズとして「プロ」が分離→ファミリーコンピュータの誕生とコンシューマ市場形成へ
  3. 「同人」にひっぱられる形で「同人ソフト」「同人ゲーム」の枠組みが誕生して分離←これ以前を「同人ゲーム」と呼ぶのは適切でない
  4. アマチュアゲーム制作は比較的小さいまま維持→フリーゲームの世界
  5. 同人ゲームは外部からの影響をうけつつコンテンツのレベルアップで独自発展
  6. 「同人ゲーム」から、インディーズとして別の形でプロが分離 ←いまここ

_ あと「同人ソフト」の中で「同人ゲーム」と両輪的な位置にある「音系」も おさえないとたぶん流れがおいきれません。たとえば「東方」は本家自体が 音コンテンツとしての側面が強いです。そもそも音楽聞かせたいから ゲームつくってるって話じゃなかったっけか。

_ インディーズ的な軸で見る場合、商業移植の実例はいろいろ紹介されてましたが、 こと「同人ノベルゲーム」→「PC美少女ゲーム業界」では、すでに業界の枠組み として一般化しています。TYPE-MOON が舗装したラインですね。 質疑応答で指摘があったと記憶してますが、戯画PBなど、同人活動を足がかりに して商業にシフトしたところは多数存在しており、むしろその部分こそを とりあげるべきだったのではないかと思いました。影響をあたえた、 というのなら、その結果どうなったのかの具体例をださないと。

_ そもそも、ゲーム開発的視点だと、同人から出発して、他社移植ではなく、自社開発で コンシューマ作品として出せるところまでたどりついてるオーガストこそが最先端だと 思ってたり。あと、それ以前に、同人にも同人ソフトにも多大な影響を与えた、 Leaf/AQUAPLUS が、「PC美少女ゲーム業界→コンシューマ」という 道筋を自力でなしとげて、今も維持してることも押さえておくべきでしょう。

_ 「ひぐらし」はスタイルこそノベルゲームで、一般への商用展開もなされてますが、 その流れは「月姫」とはかなり違います。こちらは、コンテンツを、他者(企業)が メディアミックスとして展開していて、PS2版のゲームもあくまでその一環です。 基本的に 07th Expansion はコンテンツプロバイダーとしてのインディーズを 指向してると思います。「東方」は、本体については同人の範囲から外に出る ことをそもそも選択してなくて、周辺コンテンツについては規模は小さいですが、 方向性は「ひぐらし」と近いです。ニコニコ動画との繋がりもプレイ動画ではなく、 キャラクターコンテンツの二次創作展開がメインです。 これらを「インディーズなゲーム開発」の枠組みとみなすのはちょっとあわないかなと。

_ 「ゲーム」関連の公開講座の趣旨としては、 「ひぐらし」と「東方」は、同人市場の特性と方向性(コンテンツの力で展開) の参考にとどめて、中心的にとりあげるのは TYPE-MOON および、そのフォロワー の同人ノベルゲーム→PC向け商業開発の流れを主体にするべきだったの ではないでしょうか。そういう意味では次回予定の「ひぐらし」 関連の 講演ってのはちょっとどうなんだろうと思わなくはなかったり(苦笑)

_ さて、2つ目の講演では、きっちり「ゲーム」の話をしようとして、 そうすると、日本側は、ほとんどがフリーゲーム中心になってしまって、 それ全然同人ゲームじゃないじゃん、ということになってしまってました。 そして一気にひろがる話の規模。おもしろかったし、話の要旨としては 基本同意なのですが(ベーマガはわが魂の故郷w)、じゃあどうすれば? というところまではうまくたどりつけてなかったですね。

_ 裾野が足りてないのは、ぶっちゃけ横にある山「漫画」が 大きすぎてそっちに吸われて人がいないだけじゃね?という気はしました。 あと、個人が小さいゲームを売るための市場は、日本ではコンソール機が急速に 普及しすぎて、PC でのゲーム文化が維持できなかったことがあげられてましたが、 「携帯がぶっつぶしちゃった」というのもあるのかもなーとか。 その手のゲームは無料もしくは安価でたばねてで入手するもの的土壌が 形成されてしまってる感があります。現状、対個人の流通手段として お手軽に使えるように整備されてるのは dlsite.com とかの同人系に 偏ってる気がする。

_ 状況をなんとかするべく、日本で企業がやってる枠組みとしての試みって、 良くも悪くも「上から目線」的空気がなーという気はしてたり。 今のところ展開が広がる可能性がありそうなのは XNA + XBLC ぐらい?

_ 日本だと、「フリーゲーム」でも「同人ゲーム」でも、インディーズ指向が あるところをキャッチアップしてコンシューマのラインに直接流すことをサポート するための企業が立ち上がるのが一番効果的なんじゃないのかなとか。 パッケージでなくても、Wiiware とか XBLA とか PSN でのダウンロード販売とか、 そういうとこに何か出してみたいな、と考えてる新進気鋭のところは そこそこあると思うんですが、現状、それを行うに至るまでの道が長すぎるんですね。 大手に就職して新人から偉くなるまでがんばるか、下請けやってる中小に入って 大手から機材を借りてその発注をこなしつつ、技術をためてチャンスを狙うか、 はたまた AQUAPLUS のように、自前の強力なコンテンツを矛にして一点突破するか。

_ もっとスマートにスタートできる道があってもいいんじゃないか、 各種コネありの人たちで、そのあたりをエージェント的にサポートする 企業を立ち上げるところがでてきてもいいんじゃないかなーと。 研究用の機材提供+ファーストへの企画提出のサポート+人員手配サポート。 勉強/研究のため、という理由ではコンシューマの実機材+環境を入手できない、 ってのが一番の壁だと思ってたり^^; 基本的な勉強自体は、Windows あるから問題なく出来るのですが その先はやっぱ実機材さわりたいなー。




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