_ その手の仕事してて思うところをつらつらと書いてみる。
_ ぶっちゃけ、みんな、もう PS2 を捨てて次世代に移行したいってのがたぶん本音。
_ 特に、ギャルゲーをPCから移植するスタイルの場合、次世代に移行できると、 おそらく、一般的にいわれてるのとは逆に、開発費を下げることができると思われます。 現在、PC から PS2 への移植は、システムの機能と性能に落差がありすぎて、 事実上「仕様レベルから全面的な作り直し」状態です。素材の再加工と変換、 再現できない演出の動画化などの代替化、スクリプトの仕様変更に伴う再作業など、 手間がかかる作業が盛りだくさんです。ユーザの目が肥えてしまってるため、 なかなか仕様カットできない罠。ぶっちゃけうまみがありません。
_ PS3 または 360 のスペックなら、基本的には現行主流の、PC上の汎用型の ADVエンジンとかなり同質・同等のものを作り上げることが可能で、 それを使って、PCでつくったものを「そのままうごかす」ことで、 作業コストを一気に下げることが見込めるわけです。逆に、ギャルゲー におけるもう一つの柱である、メディアミックス系作品の 作業工程を PC移植と同一にできるというメリットもでてきます。
_ 現在、PCの美少女ゲームで主流なのはCPU合成系のエンジンであり、 これにそった設計を想定するなら、360 と PS3 における技術的な差異は あまり問題にならないと思われます。大半が画像合成のためのストリーム的な 演算の塊になるので、むしろ PS3 の Cell との相性はかなり良いはずです。 メモリ的には一括で扱える360のが有利かな。DirectX系のエンジンが元だと概念のすり合わせも 360 のが楽ですね。 あと、デバッグふくめた開発環境的にはまちがいなく 360側に軍配があがるのですが、 現在の PS2 環境を想定するなら、しょんぼりはするでしょうけど、致命的な話では ないのではないかと。どうだろ。PS3 はまださわったことがないです。 営業的には、事務手続き系の流れが変わるのはやはり面倒だそうで、 PS2 の延長で PS3 に流れたほうが楽っぽいです^^;
_ エンジンの初期開発は必要になりますが、設計思想は単純なので、 おそらく 2、3人で半年〜1年ぐらいあれば十分で、その先はその エンジンを改良しつつ、3〜4年ぐらい使いつづけるような スタイルがとれれば元がとれます。可能なら、現行のPCむけエンジンを 提供してる人を直接かかえこんで作業して、他社が同じエンジンの作品を 移植するときにミドルウェアとしてシステム提供しますよーぐらいの勢いでいけると万全。
_ 問題はといえば、GPUをわりと無視したスタイルの開発は、 「PS3 / 360 の本領を発揮するつもりはさらさらない」 ってことなので、それが許されるか否かですね(苦笑)。
_ 基本的には、次世代でギャルゲーハードがなくなるってことはないと考えます。 ギャルゲー市場は、若年層の「エロゲー市場予備軍」という意味もあり、 ここが無くなってしまうと、連鎖してもろもろが縮小・衰退につながって しまうので、そういう流れはなにかしらの努力で避けられると思われます。 ただ、どのハードが市場的に優れてるかはいまだ不明瞭で、だからこそ 各社さん模索してるわけなのですが、個人的には 5pb さんの動きが気に なっております。ほら、11eyes 移植するって話で、あれって、元は 吉里吉里で、キャラ表示処理とかのコアを組んでるのは私なのですが、 かなり富豪的発想で組まれてしまってるシステムなので、そのあたり どうするのかなーってw
_ さて、プログラマ的都合を無視するなら、予備軍市場的には、 現状ターゲット第一候補になるのは PSP っぽいです。 新しい分 PS2 的苦労は一応軽減はされます。 Wii も一応この位置づけにはいってて、性能もメモリ量もPS2と比べると 段違いに上なので、PS3 や 360 のように開発スタイルの刷新とまでは できなくとも、作業自体は相当楽になるはずです。 あと、まあ、素材をHD化しなくていいってのはわりと大きかったり。 ワイド化はいずれでも課題ですが。
_ Wii の場合は、もっと大きく「ADVゲーム」というジャンルの 生息地としてがんばってほしいかも。古き良きスタイルのADVに、 現在の美少女ゲームの演出論を持ち込むのはとってもアリだと思うのです。 今、携帯に、古いADVが流れてるんですよね。その流れの コンソールへの復権はありです。女の子のキャラ要素を 多めにつっこめばそれはそれで立派なギャルゲー。 音声無くてよければ Wiiware でだってなんか作れるかも。
_ もう一つ別の観点から。ギャルゲーも含む「ADVゲーム」の理想的なプレイスタイルは、 「据置と携帯がシームレスであること」だと思ってたります。基本は電車での移動中とか、 寝る前にごろりと携帯機でプレイしつつ、重要なシーンの回想とかはTVの前でじっくりプレイ、 とかやりたいわけです。当然セーブデータはシェアできる必要があります。あと、両方 買わないとだめってのはアレなので、できれば携帯版は据置版からダウンロード可能だとナイス。 この点、理想的に運用できそうなのは PS3 + PSPなんですね。Wii + DS だとシステムの概念の 差はともかく、DSのスペックの弱さがネックです。そして360はそもそも相手がいません^^; ネットワーク保存用のサーバを独自にあげて、Wii + PSP とか 360 + PSP とか 企業の壁を越えたことができればいいんですがなかなか難しそうです。
_ このアイディアには、AQUAPLUS がPS2 + PSP でですが、Routes という前例をもってたりします。 初回版に機能限定のPSP版が同梱してて、セーブデータ共有可能でした(接続はUSBケーブル)。 AQUAPLUS が PS3 にこだわってるのはこういった観点も視野にはいってるんじゃないかなぁとか。
_
まあ、コンソールでの話は横においておいて、
とりあえず前振りとして、PC + Windows Mobile でそういうことができるような環境が組めると
おもしろいかもしれません。最近は PDA改め、WM なスマートフォンもそこそこでてるし、
舞台はそろってるとはいえるかも。PCへのインストール時に併せてインストール可能で、ActiveSync
または、ネットワークセーブでセーブデータを同期。Windows Mobile 用の素材作成とスクリプト作業を
別途しないといけない、とかだとコスト的に尻込みされるだろうけど、
全部自動で生成されるなら、各社さんの腰も軽くなるかもーとか。
システム屋視点の発想しかしてないのに、「演出『論』」とか大仰な言い方するん じゃなかったかも。私が「演出」とかいってる場合、シナリオにそった演出概念……の こともありますが、スクリプトから制御可能な画面表示機能全般を指してることが多いです。 これらの機能は、ノベルゲームの演出的には原則テキストを削る方向に 作用するもので、ゲームの進行をテキストに依存していない ADV 系全般的にも相性は悪くはないはずだ、というところからスタートしてます。 新しい配置バランスの組み上げは大変ですが、それをなんとかお手伝いするのが私のお仕事。
_ とりあえず使いどころがあるだろうとイメージしてるのは、 単純にキャラクターアクション処理の類です。動きを見てるだけで 楽しいものがつくれるなら、本体の邪魔をせずにキャラクタの 補強に使えるかなと。会話だけ分離、は、機能的にはありだと思いますが、 特には想定してません。参考作品としては、カプコンの「逆転裁判」とか、 日本一ソフトの「インフィニットループ」とか。関節キャラって萌えるよね(本音)。
_ あと、ノベル系エンジンでADVしようとしてる例だと自転車創業さんの諸作品とか… って 続き部分(日曜) で触れられてるし(苦笑)。これ、ゲームの方向性と 演出のスタイルは別でも、システム機能的には同じ方向性なのですよ。
_ 余談。自転車創業さんのシステムはもっと軽快に動いてほしい……。 あと、選択がらみのインターフェースはもっと専用処理準備したほうがいいかなーとか。 軽快さの面では、逆転裁判もけっこう繰り返し的な部分がさくさく飛ばせなくていらいらした記憶が。
_ 以下さらに余談。
>今のノベルゲームてどうしても「演出」するほどプレイ時間が長くなってる
_ うーん、それ、往々にして順番が逆なんです(汗)。 実際のスクリプト作業中には「長いシナリオに対して素材が不足して いるので、間をもたせるために、アクション的な演出をつっこんでしのぐ」 という局面がよくあります。
>演出のおかげで複雑シチュが作れるようになったからという理由で複雑なシチュを突っ込むようになった
_ もしそうなってるなら、むしろスクリプト作業は単純で楽になると思うのですが、 実際にはシナリオ段階では演出指定がはいってない部分のが多いです。 さすがにカットインとかには意図的な指定があるのですが、キャラの表情指定や動きなどは、 基本はまるごとスクリプタまかせです。おそらくシナリオが外注主体になっている こととも関連してて、要するに、シナリオ執筆時に、システム機能とそれによる表現が 周知されておらず、さらに素材作成のためのすりあわせも滞ってて、どこまで絵や 機能による演出にまかせて良いかが未知数なので、破綻防止のためにテキストが 増加傾向にあるのではないかと推測してます。
_ ライターさんが執筆作業完了してからそのままスクリプタとして 作業に入れるような体制ならそれで全然おっけーなんですが、 ライターさんは、まず音声収録のほうに回ってるし、 下手するとぎりぎりまでシナリオ書いてたりするし^^;
_ 本来なら、シナリオが上がったあと、全部を通読した上で、 イベント絵指定、カットイン指定、BGM/SE指定、動き演出指定、 などをやりつつ(※実際にはイベント絵の指定は先に行うので、この段階だと調整のみですが)、 「余分なテキストのカット」を行う役割の人を据えるべきなのですが、 なかなかそこまではされてないようです。テキストの品質に対する書き直しはあるのですが、 全体を見た上でのカットを含む再構成ってあんま行われない傾向にあるみたいなんですよね。 取捨選択ができる編集者スキルのある人がなかなかいないのかも。 あ、そもそも量多すぎてよんでる時間ねーよ、的雰囲気が……悪循環ですな。
_ 全体のシナリオ量が増大してる根本原因は、その量を決める 企画の現場にはいない私にはなんともいえないところではありますが、 シェイプアップ論はそろそろ言わないとまずかろうですねぇ。 現時点でシステム屋的にできるアプローチとしては、機能を削るのは本末転倒で、 むしろ演出機能は充実させつつ、それに対する具体的なサンプルを伴った 「教科書」を充実させ、削りおとしていくことこそが効果的であることを 示唆できればいいんですが……。
_
コンパクトでも、ユーザの満足度が高い作品を、実際に企画・ディレクション
することができればそれが一番説得力があるのは間違いないので、
そういうことを考えてて、システム的な援助がほしい
プランナー/ディレクターさんはぜひお声がけください。
メールはこちらへ...[わたなべごう (go @(at) denpa .(dot) org)]
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